腎臓病患者の私が野菜の茹でこぼしをしていない理由【カリウム制限】

腎臓病患者の私が野菜の茹でこぼしをしていない理由【カリウム制限】

腎臓病で食事制限をしている方は管理栄養士から言われたり、腎臓病のレシピ本を見て、カリウム制限のために野菜の茹でこぼしをしている方もいるのではないでしょうか?

今回は腎臓病の食事療法をしている私が「あえて野菜の茹でこぼしをしていない理由」をご紹介します。

野菜の茹でこぼしをするとカリウムが減少します

腎臓病になるとカリウムが上手く排出できずに、高カリウム血症になりやすいことはよく知られています。

カリウムはほとんどが食品の細胞のなかにあります。食品を茹でこぼすと細胞の膜が壊れ、壊れた細胞から90%以上のカリウムが茹で汁のなかに流れ出るそうです。

この茹で汁を捨ててしまえば、茹でこぼした商品のなかには数%のカリウムしか残りません。

カリウムは生野菜や生果物に多く含まれているため、これらを食べるときに茹でこぼすとカリウム削減になってカリウム制限には良いといわれています。

腎臓病患者の私が野菜の茹でこぼしをしていない理由

生野菜などを茹でこぼすとカリウムが減少することが分かりました。

ところが私は毎月の食事指導の際に管理栄養士から野菜を茹でこぼしてはいけないと指導を受けています。

その理由としては以下のようなものがあります。

  • 肉や魚など、たんぱく質が高い食品には同じようにカリウムも多く含まれているため、しっかりとたんぱく制限ができていれば生野菜に含まれるカリウムまで制限する必要はない
  • 生野菜を茹でこぼしてしまうと、味や食感が著しく損なわれてしまう
  • 生野菜や生果物にはカリウム以外にビタミンなど多くの栄養価が含まれているが、茹でこぼすとこれらの栄養価も損なわれてしまう

現に私は茹でこぼしを一切行わずに、生野菜や果物を毎日たくさん食べていますが、毎月の通院時の血液検査ではカリウムの値が3.2(基準値は3.5〜5.0)と基準値よりも若干低くなることさえあります。

そのため逆に生野菜や果物を毎日たくさん食べるように管理栄養士から指導されています。

野菜の茹でこぼしについての参考文献【腎不全がわかる本】

以前、記事の中でも紹介した出浦照國先生の「腎不全がわかる本 第三版」の中でも、野菜の茹でこぼしについての記載がありましたので紹介させていただきます。

>> 出浦照國先生の「腎不全がわかる本 第三版」を読みました

「腎不全がわかる本 第三版」の中には野菜の茹でこぼしについて以下のように記載されていました。

<野菜や果物にもたんぱく質が結構ある>
(前略)
ところが、煮こぼすことに問題があります。煮こぼして食べている患者さんがかえって高カリウム血症になるという、予想に反する事実もあるのです。
なぜ、こうした逆の現象が起こるのか、この疑問はまだ解明されていませんが、私は次のように考えています。

たとえば、一皿分の生野菜を煮こぼすと箸で一すくいほどの量になってしまいます。つまり、煮こぼすことによって、思いがけず大量の野菜を食べてしまいます。

しかも、煮こぼしたらカリウムは排出されますが、たんぱく質は排出されません。野菜や果物にはたんぱく質が含まれないと思っていませんか?とんでもない。食品成分表をよくみてください。肉や魚はみなさんが思うほどたんぱく質が入っていませんし、反対に、野菜や果物には思うほどたんぱく質が少なくないのです。つまり、煮こぼすとカリウムは減らせますが、安心してたくさん食べてしまい、結局よけいなたんぱく質をとることになってしまいます。

体内に入ったたんぱく質は燃えますが、肉や魚のたんぱく質はアミノ酸スコアが100に近いくらい良質のもので、そのほとんどが体をつくるために使われますから燃えかすが残りません。ところが、野菜や果物のたんぱく質はほとんどがアミノ酸スコア50前後ですから、残りの50パーセント前後が燃えてしまいます。燃えかすは酸を出しますが、この酸が腎臓から出ていかないために、血液が酸性になって、その結果カリウムが細胞から出てきます。血液が酸性になるとカリウムが上がり、カリウムが上がるとさらに血液が酸性になるという悪循環をつくり、結果的に高カリウム血症になるというのが私の推測です。

<大切な栄養素が流されてしまう>
煮こぼすことには、もう一つ重大な問題があります。熱に弱いビタミンCは破壊されてしまいますし、その他のビタミンや微量元素も流れ出てしまいます。したがって、煮こぼしを長く続けると栄養障害に陥る危険性があります。

腎不全がわかる本 第三版 P172

出浦照國先生の「腎不全がわかる本 第三版」の中ではこのように、野菜の茹でこぼしをして食べている患者さんがかえって高カリウム血症になってしまう理由や、カリウム以外にもたくさんの栄養素が流れ出てしまうことによる、栄養障害の危険性を指摘されていました。

野菜の茹でこぼしを推奨されている腎臓病のレシピ本などはたくさんありますが、逆にこういった野菜の茹でこぼしによる危険性に触れている本は珍しいのはないでしょうか。

出浦照國先生の本にはこれ以外にも、腎臓病の食事療法の世界的権威として食事療法を長年指導されてきた出浦先生の経験から書かれていることが多いため、一般的な腎臓病の食事の本では触れないところまで記載されています。

>> 出浦照國先生の「腎不全がわかる本 第三版」を読みました

食事療法は管理栄養士の指導のもと正しく行いましょう

今回は腎臓病患者の私があえて野菜の茹でこぼしをしていない理由をご紹介しました。

私は茹でこぼしを行わず、生野菜や果物を積極的に食べていますが、その代わり毎月の通院時の血液検査や24時間蓄尿による測定結果から、カリウムの1日摂取量や血清カリウムなどを確認した上で、管理栄養士から野菜の茹でこぼしを行わないように指導されています。

これらを行わずに自分の判断で生野菜や果物をたくさん食べるのは大変危険ですので、必ずかかりつけ医や管理栄養士の指導のもと、正しく食事療法を行っていきましょう。

腎臓病のレシピ本や料理教室で野菜の茹でこぼしがよく紹介されていますが、本当に自分には茹でこぼしが必要なのか今一度確認してみてくださいね。

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