CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】を読みました
この記事では、CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】を読んだ感想と、その中でも特に参考になった情報を抜粋してご紹介します。
CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】とは
CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】とは、栄養指導・管理のためのスキルアップシリーズのVol.4として出版されている書籍です。
この本のポイント
- 金澤良枝、菅野丈夫、中尾俊之、酒井謙など腎臓病の食事療法の第一人者が編集を担当しているため、信頼性の高い情報が載っています。
- 全ての情報にエビデンス(根拠となる情報)が記載されています。
- 患者向けというよりは、管理栄養士向けに書かれているため、食事療法および食事指導の実践的な知識の解説がメインです。
- 全てQ&A形式で30問の「CKDの最新食事療法のなぜ」に答えています。
参考になった情報を抜粋してご紹介
基本的には管理栄養士向けの本なのですが、患者にもとても参考になる情報がいくつかありましたので一部ご紹介します。
低たんぱくの食事療法での1日3食のたんぱく質の配分
たんぱく質を3食でどのように配分したらよいかについては以下のような記載がありました。
当院の研究では3食均等に配分しないほうが治療効果を上げる可能性があることが示唆された。本研究では、指示たんぱく質30g以下かつ指示エネルギー量を遵守できていた保存期慢性腎不全患者17人を対象に、たんぱく質を1〜2食に配分したグループと3食均等に配分したグループで腎機能障害進展速度と栄養状態、血液生化学データの比較検討を行ったところ、栄養状態、血液生化学データに有意差は認めなかったが、腎機能障害進展速度は3食分散群に比べて、1〜2食群においては有意に抑制されていたと報告している。
たんぱく質を3食均等に摂取した場合、1日に3回、たんぱく質の摂取による糸球体血行動態の以上などによる糸球体障害が惹起されるのに対し、たんぱく質を1〜2食摂取した場合には、1回あたりの糸球体障害の程度は強いものの、糸球体障害が惹起される回数が少ない。すなわち、糸球体にかかる時間が少なくなることがその原因ではないかと考えている。CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】 P38
ある研究では、3食均等よりも、たんぱく質を1〜2食した方が腎機能の障害進展速度は抑制されていたそうです。
著者の場合は、朝はあまり食欲が湧かないため、薬を飲むための最低限の食事しかしていないので、残りの1〜2食でたんぱく質を摂るということが自然と実践出来ていました。
ただし、本の中では、
- たんぱく質を1〜2食にまとめた場合、エネルギー不足による異化亢進や、糖尿病患者の場合は、処方薬の内容によって低血糖を起こす危険性がある
- たんぱく質の配分によって1食あたりのリンの摂取量も変化する。リン吸着薬が3食均等に処方されているのに対し、たんぱく質摂取量が1食に集中している場合、薬の効果が十分に発揮されない
などの記載もありました。
たんぱく質の配分を極端に変えると上記のような懸念もありますので、実践する場合は、かかりつけの医師や管理栄養士に相談してみてください。
自由食の頻度が低たんぱく食の治療効果に与える影響
著者はエネルギー2400kcal、食塩 5g、たんぱく質 40g の食事制限をしていますが、食事制限をしていてもたまにはラーメンやお寿司など自分の好物を食べたくなるときもありますよね。
この本にも自由食が低たんぱく食の治療効果に与える影響についての記載がありましたのでご紹介します。
この疑問に対しても明確な報告はない。著者らの経験では、普段食事療法が遵守されていれば、月に1〜2回程度、指示栄養量を上回る食事を摂取しても腎機能に影響を及ぼさないことを経験している。この経験から、食事療法が遵守されている患者であれば、月に1〜2回程度の自由食を許可している。
ただし、自由食といっても限度を超えた無茶な食事というわけではない。透析導入前の末期慢性腎不全の状態であっても、日常のたんぱく質制限が遵守され、高窒素血症が十分に抑制されている状況下であれば、月1〜2回程度、たんぱく質摂取量が指示量を上回っても、自覚症状の出現や、病態の悪化につながることはない。
自由食で問題になるのは、たんぱく質の過剰摂取よりも食塩とカリウムが一過性に過剰になる場合である。ナトリウム摂取量を急激に増やした場合、尿中のナトリウム排出量が摂取量と同等になるには5日程度の時間が必要であり、その間ナトリウムバランスは正となりナトリウム貯留性の浮腫を生じやすい。また、血液透析患者においては、食塩を過剰に摂取すると透析間体重増加量が増え、除水量が増加する。また、カリウムの多い食品を大量に摂取すると顕著な高カリウム血症を呈する危険性がある。CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】 P39
普段食事療法が遵守されている患者であれば、月1〜2回、指示栄養量を上回る食事をしても腎機能に影響を及ぼすことは少ないそうです。
ただし、自由食を摂ったあとは5日程度は尿中のナトリウム排出量が多くなるようですので、検査前など1週間は自由食を控えた方が良さそうです。
また、自由食といっても際限なく食べて良い訳ではなく、一般の人と同じ量の食事を摂っても良いという意味ですのでご注意ください。
腎臓の食事療法は生涯必要な場合が多いです。著者のように食べることが生きがいな人間にとっては、食事制限が必要になって生きる楽しみが一つ減ってしまったと感じる人も少なくないと思います。食事制限を徹底してQOLが著しく低下するよりは、月1〜2回の外食を楽しみに毎日の食事制限を頑張るという生き方もあると思います。
ちなみに著者は、毎月の病院帰りに食べるラーメンを楽しみに、毎日の食事制限を頑張っています(笑)
正しい知識を身に着けて楽しい食事療法ライフを!
この記事では、CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】を読んだ感想などを紹介しました。
腎症の食事療法は多くの場合、生涯の付き合いになりますので、患者自身でも勉強して正しい知識を身に付けていきましょう。
ただし、本の中で紹介されている情報は自分の判断だけでは実施せずに、必ず、かかりつけ医や管理栄養士に相談の上実施してくださいね。
今回、ご紹介した「CKDの最新食事療法のなぜに答える【実践編】」は医師や管理栄養士向けに書かれているため、
患者には少し難しい内容も多いですが、上記で引用している文章を見て自分でも読めそうだと思った人はぜひ購入してみてください。
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